文・とよかず/イラスト・みのり
平成11年1月のある日のこと。
その日は、2・3日前からの寒波で小雪がちらつくとても寒い日でした。
夕方のこととて、あたりはもうすっかり暗く、私は残業の帰りなのです。
いつものように駐車場まで来ると、車の陰に何か動くものがいるのです。
よく見ると小さな猫で、私が近づいて行くと、頭を私の足にスリスリしてきます。
寒さにガタガタ震えているようで、私の心はたちまちそのボロきれ
のような仔猫に奪われてしまったのです。
家にはノラ上がりの「ポウ」と、娘が千葉から連れてきた「ふう」がいましたが、
その時は仔猫を何とかしなければという思いで一杯でした。
家に帰り、体を湯で洗ってあげ、猫缶をあげました。
セキがひどく、クシャミをすると血の混じった鼻汁が、あたり一面にパッと飛び散るのです。
肺炎かも知れないと思い、翌朝一番に獣医さんのところに連れて行きました。
やはり風をこじらせ肺炎になりかかっているとのこと。
それから毎日注射をしてもらいに通いました。
2週間くらいするとようやく症状も軽くなってきたので、ホッとしました。
さて、名前をどう付けようかと考えました。
鼻の所が黒くて、チョビヒゲのようなのです。
まるでチャップリンのヒゲのようなので、「チャップ」と名付けました。
チャップはわが家の3匹の中で、一番活発で人なつこい猫です。
いたずら好きのおてんば娘で、すごい甘ちゃんです。
私がそばを離れると、「行かないでぇ〜」というように泣き続けます。
最近私が「ぐでん!」というと、大きなおなかを上にしてひっくり返ることを覚えました。
いたずらをして怒られそうになると、「ぐでん!」と言われないのに、
ひっくり返って私と家内を大笑いさせます。
おんぶして貰うのも大好きで、家内が台所に立つと、きまって「おんぶ〜」と催促します。
いつまでも元気で「ぐでん」してね。チャップ!
−完−