【泣かないで】

文・テト母/イラスト・みのり

猫の絵


私はすごく小さくて良く覚えていないのだけれど

お家の近くの空地でずっと鳴いていたんだって。

暖かい小さな手に抱き上げられて私は家族の一員になったの。

家族はお父さんとお母さんと小学生のお兄ちゃんとお姉ちゃん。

それと犬のモモ姉ちゃん。


お母さんと初めて病院に行った時も

先生は『150gか、小さいねえ。大変だよ。』って言ったけど

お母さんは『大丈夫、これからは私たちが家族だからね』って。


みんな私をとっても大事にしてくれた。

お母さんはお仕事してたけどお昼休みには毎日帰ってきてミルクをくれたし、

モモ姉ちゃんと一緒に遊んだり、眠ったり毎日楽しかった。

お母さんの作ってくれたバンダナのネズミが大好きだった。

階段で落っことして追いかけて遊んだ。

お兄ちゃんは『猫がこんなにかわいいなんて知らなかった』って言ってたし、

お姉ちゃんは『いつも一緒にいたいなあ』って抱っこしてくれた。

楽しかった。

とってもしあわせだった。

こんな日がずうっと続くと思っていた。



ある日突然お腹が痛くなってお母さんに病院に連れていってもらった。

いろいろ検査されてお腹がすごく痛いのに一人ぼっちで入院。

みんな帰ってしまって淋しかった。

でも翌日お母さんは朝早くにきてくれて

『今日、手術したら直るからね。そしたら一緒に帰ろう』って。

ちょっと怖かったけど、またお家に帰ろうってがんばったの。

でも。



ごめんなさい。

みんなを悲しませてしまって。

わずか7ヶ月間だったけど私、すごくしあわせだった。

だからもう泣かないで。

これからもいつでもお空からみんなのこと見てるよ。

いつもね。

だから

もう

泣かないで。




 
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