【こんなこウラン】

文・まみさん/イラスト・みのり

猫の絵


1997年の12月。

同窓会の打ち合わせで、車で30分ほどの実家の近くへ出かけた時のことです。

少し遅くなったので近道をしようと、全然家のない山越えの道を通りました。

ふと見ると道の端を1匹の猫が歩いています。

雨は降っているし、これからだんだん寒くなるのに、

こんな家のない山の中でこの冬を乗り切るのは大変だろうし、かといって、

我が家も家猫4匹そとに元ノラが1匹、

これ以上猫が増えても責任持って飼えるかどうか・・・・。



でも猫好きの私はそのまま見捨てていく事はできません。

打ち合わせの時間もせまっているし、車の前はカーブになっていて、

前から車がきたらこんな所に止めていてはぶつかってしまいます。

そこで、ほんの2秒、助手席のドアを開けて「ホラ乗られえ!」と、チャンスをあげたのです。

もちろんすぐドアを閉めて車を出すつもりでした。

するとすかさず「ウンニャー」と言って乗ってきたのです。

まさか乗ってくるとは思いもしませんでしたが、

その子は自分から自分の運命を決めたのです。



私はいつも持ち歩いている猫缶を開けてやりました。

2缶をぺろっとたいらげて、あとは、私のひざの上で

ゴーーロゴロ、ゴーロゴロ、ふみふみ、ふみふみ、運転しているのが危ないくらい、

胸のあたりから肩のあたりまで、ふみふみベタベタしてきます。

目的地について、「待っとかれよ〜!」と言って車に残して同窓会の打合わせに行きました。

その子は2時間半ほど、じっとしていたみたいで、

帰りの車の中でも、ずっとベタベタしていました。



家の中には4匹の猫がいて、チンチラの毛はぬけるし、

短毛の1匹は時々、おしっこをトイレ以外でするので、主人のご機嫌が悪くなっていました。

そのため家の中に入れてやることが出来ず、

先住猫のみいちゃんの猫ハウスのとなりにもう一つ猫ハウスを作って

ペットヒーターをセットしてあげました。




ウランと名付けたその子は、家の中に入りたくて入りたくて、

玄関で音がすると玄関へ、勝手口でゴソゴソしてると勝手口へ、

お風呂に入っているとお風呂の窓に飛んで来て、網戸にぶらさがります。

あげくのはてに、隣の家の屋根から子供の部屋の窓に向かって飛んでくるのです。

特に雨の日が嫌いで、雨が降ると、あっちからニャーニャー!こっちからニャーニャー!

まるで牛若丸のような猫です。あまりの熱心さにこちらのほうが心が痛んで、

しばらく主人に内緒で子供の部屋に入れていました。

子供の部屋に入れてもらったり、外で遊んだりしながら、

今では自分の家は物置にしているバスの中とよくわかっています。

でも、子供や私が帰って来ると飛んで出てきて、抱っこしてもらいます。





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