文・テト母/イラスト・みのり
小学5年の長男が生まれた頃のお話です。
その頃、私は動物の飼えない集合住宅に住んでいた。
それは古い建物だったけど、塀で囲われた広い敷地に建っていた。
近くに大きな魚市場があって、そのせいかノラ猫も多かった。
回りはトラックや人でいっぱい
。 でも塀の中は猫達にとって安全な場所だったようだ。
その中に我が家でいつもご飯を食べ、眠って、夜になると帰ってゆく黒猫がいた。
名前は【あかね】。
彼女との出会いは赤ちゃんの時。
その一年ほど前、彼女のお母さんが我が家に遊びに来るようになって
ある日、こたつの中で4匹の赤ちゃんを産んだ。
2匹は無事里親さんが見つかったが、後の二匹は見つからない。
そのうち子猫達は大きくなって母親と一緒に外猫として通ってくるようになった。
子猫が大きくなると母親は我が家には来なくなった。
そして、もう1匹のオスの子猫も来なくなり、あかねと名付けた子だけが残った。
その頃私は初めての子供がおなかにいた。
産休を取り、家にいることが多くなったのであかねもいつも一緒にいた。
そうして、無事出産し、退院して家に戻るとあかねがやってきた。
早速、新しい家族になった私の赤ちゃんをあかねに紹介。
すると、あかねはちらっと一目見てふっと外に出て行ってしまった。
それから、二度と戻らなかった。何度も当りを探したけどどこにも見当たらなかった。
赤ちゃんがやってきて居場所が無いと思ったのだろうか?
そんな事、絶対絶対無かった・・・それ以来、私のシンボルマークは黒猫になった。
1991年12月の冬の日のお話。