【ミーとさとちゃん】

文・さと/イラスト・みのり

猫の絵


ミーとさとちゃんが出会ったのは、ある春の日。

ミーが住む町にさとちゃんが引っ越して来ました。

ミーはメスのサビ猫。

さとちゃんは小学校3年生の女の子。

さとちゃんとミーはすぐに仲良くなりました。

ミーという名前はさとちゃんが付けました。

さとちゃんは一人っ子で、お父さんもお母さんも仕事をしていたので

学校から帰ったさとちゃんはいつも1人で留守番していました。

そんなさとちゃんの話し相手をしてくれたのがミーです。

さとちゃんはミーがいてくれたおかげで寂しくありませんでした。


ミーとさとちゃんが出会ってから数カ月の後、ミーは4匹の赤ちゃんを産みました。

外で暮らす猫にとって、子育てはとても大変なものです。

外には危険がいっぱいだし、食べ物だってそんなにあるわけではありません。

ネズミやトカゲを捕ったり、ゴミ捨て場を荒らしたりして、どうにか食いつないでいましたが

子猫が大きくなっていくとその分食べ物だってたくさん必要になってきます。

ミー親子は、いつもお腹を空かせていました。

ミーはこっそりさとちゃんの家に入って、お魚とかお肉とかを盗んだこともありました。


お腹を空かせた子猫達のためにはどうしても食べ物が必要だったのです。

悪いことをしてるってことはわかってはいても、仕方が無かったのです。

でも、さとちゃんのお母さんは、ミーのことを怒ったりしませんでした。

それどころか、毎日ミー親子のためにたっぷりご飯を用意してくれるようになりました。

ミーはもらったご飯をくわえては持ち帰り、子猫達に食べさせてました。

子猫達が少し大きくなった頃、ミーは初めてさとちゃんに子猫達を会わせてくれました。


さとちゃんはとても喜んで、「ミーの子供だね。可愛いね。」って何度も言いました。

最初は警戒してた子猫達も、すぐにさとちゃんになついていきました。

それからは、ミーは毎日子猫達を連れてさとちゃんに会いに行きました。


子猫達が生まれて2ヶ月くらいたった夏の終わりのある日、台風がやって来ました。

外で暮らす猫達にとっては、台風はとても恐いものです。

子育て中のミーにとってはなおさらです。ミーはとっても心細い思いをしました。

少しの雨くらいなら防げる寝床はあっても、台風の大風と大雨はとても防げるものではありません。

このままでは、子供達の命が危ないって思った時、ミーは決心しました。

安全なところに避難しよう。避難するならあそこしかない。

それは、さとちゃんの家。これは命を賭けた決心でした。


大雨大風の中、子猫を連れて外に出るのはとても危険だし

もし家に入れてもらえなかったらどうしよう。

そんな不安はありましたが、このままでは子猫達の命が危険にさらされてしまう。

そう思ったミーは、1匹の子猫を口にくわえてさとちゃんの家へ向かいました。

ずぶ濡れになり、何度も強い風に吹き飛ばされそうになりながら

さとちゃんの家の前までたどり着いた時、さとちゃんの家の玄関が開きました。

さとちゃんもお母さんもお父さんもミー親子のことを心配して、何度もミー親子を探していたのです。


「おいで。早く入っておいで。」


その言葉を聞いたミーはすぐにさとちゃんの家に飛び込みました。

でも、まだ安心してはいられません。まだ3匹の子猫達を残して来ています。

ミーは1匹目の子猫を家に入れて、またすぐに外に出て行きました。

台風のさなかに子猫を連れて移動するのは、思ったより大変でした。

1匹運んでは帰り1匹運んでは帰り

4匹の子猫をさとちゃんの家に連れて行くまでに、2時間もかかりました。

無事に4匹の子猫達をさとちゃんの家に連れて行くことできた時

さとちゃんもお父さんもお母さんも

「みんな無事で良かったね。ミー、えらかったよ。」って言ってとても喜びました。

濡れた身体を拭いてもらい、たっぷりご飯をもらったミー親子は

その夜安全な家の中で安心して眠りにつきました。


次の朝、目が覚めたら台風は過ぎ去っていました。

さとちゃんのお父さんとお母さんは、ミーは野良猫だからきっとまた出て行くんだろうと思っていました。

でも、さとちゃんはミー親子にずっと家にいてほしいと思っていました。

そんなさとちゃんの気持がミーに通じたのでしょう。

ミー親子はさとちゃんの家で暮らし始めました。


4匹の子猫は

くーくん(黒)、くまくん(黒)、あっくん(茶トラ)、みーこ(サビ)

という名前を付けてもらいました。

5匹の猫達が暮らし始めたさとちゃんの家はとてもにぎやかになりました。

さとちゃんは、もう一人っ子ではありません。


ミー 「さとちゃん、これからもずっと友達だよ。」

さとちゃん 「ミー、ずーっと一緒にいようね。」


このお話しは、さとが子供の頃、初めてうちの子になったミーの物語です。

ミーは、もう何年も前に天使になってしまいましたが、初めてうちの子になった猫ですので

今でもミーのことはよく覚えています。サビ猫で顔の半分が真っ黒。

ちょっと太めのからだによく似合うチョコンと付いた短いシッポ。

グリーンの瞳が綺麗で、美人で可愛く、とても賢い猫でした。

ミーがいたから、今の猫好きのさとがいると言っても過言ではありません。


ミーに出会えてよかった。

ありがとう。

ミー。





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