【ネコが教えてくれた事】

文・十六夜/イラスト・みのり

猫の絵


「え・・・」

それがいきなり突きつけられた”事実”というやつだった。

学校から帰るなり、いきなりソレを告げられた俺は

確かに、空気が凍る瞬間と、時間が止まる瞬間を感じた。



「・・・どうやって死んだの・・・・」

俺の言葉が以外だったのか、泣いていた母が驚いたように顔を上げた。

「・・・毒の・・餌で・・・」



俺は、そのとき自分が案外精神的に強い事を知った。

一週間見なかったんだ。予想してなかった結末じゃない。

なにより事故じゃない。犯人を探し出せる。

てっきり泣き崩れると自分でも思っていたのに、

そのときの高揚した気分と言ったら・・・



俺は飛び出した!

家の周りから、それこそ地の果てまでも探すような覚悟があった。

後日談だが、親に言わせると、そのときの俺は「鬼人」のようだったと言う。



しかし、三日間地べたをはいずりまわったが、”幸運にも”

犯人を見つけることはできなかった。

はじめは、「犯人を見つけたら、どうやってヤツ裂きにしてやろうか」

という高揚感でいっぱいだった俺も、時がたつにつれ、高揚感が焦燥感にかわり

だんだんと無力感に支配されていった。



「こんな無駄な時間を使うなら、みんこ(飼い猫の名前)の供養をするべきだった」

犯人を見つけ出していたら、バカな俺のことだ、これで供養になると思ったにちがいない。

みんこのために、みんこの代わりにと思ってやっていたことが、

結局は単なる「自己満足行為」に過ぎなかったのだ。

後悔と自責とやるせない思いがどんどん積み重なってきた。



母が作ったみんこの墓の前で、その時俺は初めて涙を流した。





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